PC DEPOTとは?ビジネスモデルから未来展望まで、アナリストの鈴木行生氏をお招きして語ります。

使っていく上で、長くお付き合いのできる『ITソリューションストア』

鈴木行生(以下、鈴木
PC DEPOTが顧客に提供する価値を教えて下さい。

野島隆久(以下、野島
当社はITソリューションストアとして「安い、安心、便利、親切」を提供しています。パソコン周辺機器の販売を行う量販店として、今までは価格や買いやすさ、利用しなれた店舗ということでお客様にお付き合いいただいていました。今は使っていく上で長くお付き合いできる「ITソリューションストア」として変化をしています。

鈴木
使っていく上で長くお付き合いとは、「パソコンだから」そのように利用いただけるということですか。

野島
パソコンを始めとした「スマートデバイス」はそういった長いお付き合いが必要と考えています。
スマートデバイスと呼ばれるパソコンやタブレットは、それ自体が変わらなくても、環境が変化したり、新しいサービスが増えると、結果的に買い換える必要が生じたり、設定が必要になることがあります。それがデジタルネットワークの特徴であり、家電と大きく違うところです。
使っていくうえでのご不便に対して「今後のサポートを提供することができる」というのが当社の価値と考えています。お客様は当社でご利用いただくことで、今後使っていく事のご不便に対するサービスを受けることができますし、当社はそのサービス対価を頂戴することができます。

当社のCSRは唯一、情報格差解消。お客様のデジタルデバイトを低減、
格差解消に取り組むということ

野島隆久

鈴木
PC DEPOT は小売業と思っておられる方も多いと思います。実際は何を販売する店舗なのですか?

野島
業態は小売業ですが、収益に占める粗利は物販売上よりサービス売上の方が大きくなっています。
売上基準でとらえると「小売業」が「サービス業」をおこなっているととらえられますし、収益に占める比率で考えれば「サービス業」が「小売業」もやっているという立てつけです。もちろん小売の分野も成長が必要です。今後も使って行く上で便利で必要な新しい製品が発売されますので、小売で必要なものを販売し、使っていく上で必要なサービスを提供していくという事になります。

鈴木
TVや冷蔵庫、洗濯機といわれる家電製品はそうではないのですか?

野島
違うと考えています。
その違いは、商品起点かお客様起点かというところにあります。
商品起点で考えますと、例えばTVが売れなくなりました。次にTVに変わる商品はなんだろうか。パソコンでTVが見られるようになった。では次に地デジチューナー付パソコンが売れなくなった場合何が売れるんだろう、という、「商品起点」の考え方になります。
もう一方、お客様起点で考えるとインターネットというインフラにつながるデバイスを当社は販売しております。パソコンがタブレットに置き換わってもサービスはその延長線上で続けて提供することができます。
商品を販売する際、品物が変われば売り場が大きく変更し、商品説明も違うことになります。その点、サービスはデバイスが置き代わっても技術者は同じ人間が務めることができ、お客様からいただける対価もほぼ同じです。

鈴木
商品販売と継続的なサポートを行うということですね。あまり耳にしない業態ですが、似たような業態はありますか?

野島
当社のビジネスは3つの粗利で構成されています。
①物販、②修理・メンテナンス技術料、③会員様サポートの3つです。
当社のように物販と会員様サポートを絡めた業態はあまり類を見ないと思います。
われわれの目的は地域のインターネットの普及とそれに詳しくない方でも安全に使いこなせる利便性の追求です。
その目的を達成しようとした結果、詳しくない方でも安全に継続してデバイスを使用していただこうと考え、会員制にして毎月代金を頂戴し、いつでもサポートが受けられる体制をとることになりました。
当社のCSRは唯一「年齢、性別、所得、教育水準、居住地域によって発生する可能性のある情報格差。すなわちデジタルデバイドを低減、格差解消に取り組む」ということです。
それが会社の基本的な考え方になります。
販売粗利の3つの柱がこのCSRに基づいて変化していくことは十分に考えられますが、基本的な考え方は変わりません。

鈴木
PC DEPOTのお店は、全国展開していますが株主さまの中には自宅のそばに店舗がない方もいらっしゃると思います。
今、ご説明いただいたサービスモデルですとお客様は店頭に行って設定と販売を受けられるものなのか。
それとも、インターネット販売でも同じサービスを受けることが出来ますか?

野島
現在、インターネット経由でのお客様へのサービスの提供はほとんど行なっておりません。
宣伝はWEBも使い行なっておりますが、お客様には店舗に足を運んでいただき、店でサポートをさせていただいています。
まずはサービスの質を安定させ、幅を広げ、厚みを増していくことに注力します。
今後はお客様が許して下さるのであれば、厚みや幅は狭まりますがサービスの部分的提供を行う可能性があります。

パソコンの台数が減ってきているのに何で儲けているの?
・・・強み、ビジネスモデルの転換とその進捗度

鈴木行生

鈴木
パソコンの出荷台数は減少傾向です。
今後の展開はどのように考えていますか?

野島
確かにパソコンは減少傾向にあります。
ただし、デバイスは増加傾向にあります。パソコンの減少分は単価の安いデバイスにかわり、単価が安い分、一人あたりの台数は増加するとみています。
一人の所有台数が増加するということは、安定したネットワークや、より高速なインターネット環境、データの共有など、お客様が必要とするサービスは益々、多様化することを意味します。
パソコンだけを利用していた時より、デバイスの種類が増えることによりサービスは多様化します。
現在、複数のデバイスでデータの一元化が行われ、それが広く認知されているのはアップル社のiPhoneやiPadです。
当社は、パソコンやスマートフォンなどの複数のデバイスで同じメールを見たいというようなご希望のお客様にそのサービスを提供できる強みがあります。
それはパソコンを軸として幅を広いサービスを提供している当社の強みだと考えています。

鈴木
パソコンは、今後なくなるのですか?
パソコンは生活の中でどのような位置づけになるのですか?

野島
パソコンは共通言語になり、プラットフォーム化すると考えています。
パソコンはスマートデバイスの「ハブ(拠点)」としての役目をもち、スマートフォンやiPhone、iPad、Androidデバイスの写真やデータもパソコンに入れることで共通化できます。
データをクラウドに保存する図式もありますが、目の前にあるパソコンにデータが入っている安心感は依然としてあります。

鈴木
ビジネスモデル、つまりお客様に提供する価値創造の仕組みを教えてください。

野島
4つの軸があります。
1つ目はパソコンなどの物販による粗利です。
2つ目は長く使っていただけることによるサービスという収益です。
3つ目はパソコンを始めとする各種デバイスに対応するサポートと、それらを結びつけるトータル的なサポートによる収入です。
そして4つ目は、デバイスとデバイスサポートに電子書籍などのコンテンツを合わせたコンテンツサービスです。この4つが、価値創造の仕組みです。

鈴木
現在PC DEPOTの出店していない地域への対応はどのように考えられていますか?

野島
少しずつ広げていきます。
今年から来年にかけては関東が収益源となります。
景気が良くなってきたと言われますが、「景気が良いから拡大」という考え方ではなく、今は足場を固める時期と考えています。
サービス売上は売上に占める割合が3割ですが、利益構成比は7割です。この高成長を維持することが、結果的に新規出店と同じ効果を生み出します。
この収益構造を維持することと、サービスの幅を増やすことは両輪で進めていくことが可能です。そこでまずは足場を固め、その後新たな地域に出店を検討したいと考えています。
コンテンツサービスを増やすことは、当社にとって出店と同じ効果があると考えています。
サービス売上を増やすために仮に出店が1年遅れたとしても、5年のスパンで考えればお客様に御迷惑をおかけすることは少ないと考えています。

10年先まで、地域のお客様と一緒に栄えるビジネスモデルです。

鈴木
5〜10年後の展望は?次のビジネスモデルの姿はどうお考えですか?
それに向けてどういう手を打つのか、お考えをお聞かせください。

野島
「地域の情報格差解消に貢献する」という会社の基本的な考え方やCSRに対する考え方は変化しません。
そのため取り扱う商品は5,10年後の時代に合わせて変化しますので、その時にならないとわかりません。

鈴木
自動車を売る、可能性もあるということでしょうか?

野島
その時にならないとわかりませんが、ネットワークに繋がる電気自動車への対応は必要であろうと考えています。インターネットにつながっている自動車・電化製品など、対応する商品の数は増え続けていくと考えています。
たとえばですが、学校教育で使用されるデバイスやネットワークへの対応、日常の買い物にご不便を感じる地域や高齢者の方への貢献なども考えられます。
われわれは、今後も身の丈に合った貢献を継続していくことで、情報格差がもたらす「不利益の解消」をおこなっていきます。
われわれの考える「情報格差」とは、ソーシャルネットワークを利用することや新しいサービスを使うことを指しているわけではありません。
今までやっていることを「アナログ」から「デジタル」に置き換える、これを格差の解消だと考えています。
昨日まで購入した雑誌を持ち歩いていた方には、iPadに何冊もコンテンツを入れて差し上げても、重さはiPad1台分ですみます。
新聞も文字を拡大したり、明るさを調整して見やすい彩度で見ることも可能です。
こういった、同じことしているのに、便利になった、費用が相対的に安くなった、といったことがデジタルデバイドの解消と考えています。
地域にとって、PCDEPOTがあってよかった、と言っていただける貢献をすることが当社の最も大事な価値であると考えています。

鈴木
「情報格差がもたらす不利益の解消」が最大の価値ということですね。よくわかりました。本日はありがとうございました。

野島
ありがとうございました。

野島隆久(のじま たかひさ)

(株)ピーシーデポコーポレーション代表取締役社長
桜美林大学卒業。野島電気商会(現・(株)ノジマ)入社。1994年(株)ピーシーマーチャンダイズ(現・(株)ピーシーデポコーポレーション)を設立。

鈴木行生(すずき ゆきお)

東京理科大学大学院理工学研究科 経営工学専攻修士課程修了。1975年(株)野村総合研究所入社、東京、大阪、パリでの企業アナリストを経て、1996年取締役企業調査部長。1997年野村證券(株)取締役金融研究所長。2000年野村アセットマネジメント(株)常務執行役員。05年野村ホールディングス(株)取締役。2007年社団法人日本証券アナリスト協会会長(09年8月まで) 2010年7月(株)日本ベル投資研究所を設立し、アナリストとして活動中。